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■時間外労働の根拠について

労働基準法に原則1週間40時間の総枠規制があることは見てきたとおりです。

ですが、実際には残業こと時間外労働をされている方も多いのではないでしょうか。
むしろ、このご時世で残業は全く存在しない人のほうが少ないかもしれません。
とは言っても、やはり例外を認めるにはそれなりの根拠が必要となってきます。

では、労働時間の規制についてはどのような根拠でもって、その例外を認めているのでしょうか。
これは、大きく分けて労働者と使用者の協定による例外と、それ以外の例外が有ります。

まず、労働者と使用者の協定による例外についてです。

36協定(サブロク協定)なんて言葉は耳にしたことがある人も多いかと思います。
この36協定は、36時間までなら時間外が大丈夫、という協定ではありません。


使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、労働時間または休日に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。 (労基法36条1(一部変更、抜粋)

労基法36条にこの決まりがあり、それに伴って結ばれる協定だから、36協定っていうんですね。
ただし、36協定を結んだからといって時間外労働をさせられるわけではないです。
36協定は、労基法違反だけど労働させても許してあげる、という当局の許可(免罰)を持つだけであって、
時間外労働をさせる場合には就業規則や労働契約などで規定をしておかなければいけません。(日立製作所武蔵工場事件)

また、36協定を結んでも、原則として時間外労働は一ヶ月に45時間を超えてはいけない、と厚生労働省の基準に書いてあります。

もっともこれにも例外が有り、特別条項付きの協定を結ぶことで、時間外の中でも臨時的に
45時間をさらに超えて労働をさせても法律違反にはならなくなります。

次に、36協定以外の例外です。

これには大きく分けて3つの種類があります。

1. 非常災害時及び公務の場合

2. 一部の職種及び労働形態の場合

3. 管理監督者などの場合

の3つです。

順番に見て行きましょう。

まず非常災害時及び公務の場合ですが、これはわかりやすいと思います。

例えば大地震や火事が起こった場合に、その管理や後始末などが必要であることはみなさんご納得いただけるかと思います。
もしもこれが認められないとなると、地震などが起きた時に、すぐに協定を結んで役所に届けて、としなければならなくなってしまいます。
また、外交上で大きな問題が起きた時に、外交官などに今すぐに行動してほしい時なんかも同じですよね。
だから、こういった時は時間外労働をさせられるわけですね。

次に一部の職種及び労働形態です。
これには例えば農業畜産、水産業などの職種や、断続的な労働、宿日直勤務などがあります。
職種については、自然条件によって左右される場合が非常に大きいので、ということですね。
農業については例えば台風が来たら働けないかもしれないし、逆に田んぼの様子を見に行かなければ行けないかもしれません。

また、農繁期は忙しいけど農閑期は暇なこともあるでしょう。
だから、労働時間だとか休日の規制がないんですね。

宿日直や断続的な労働、例えばお抱え運転手さんなんかは、
実質の労働時間が拘束時間よりもずっと短かったり、
労働の質もそこまで求められていなかったりすることがあるので、例外になっているわけですね。

最後に管理監督者などについてですが、これはいわゆる管理職とは別物です。
労基法全般にそうなのですが、役職の有無と残業代などは原則関係がありません。
実務上、経営者と一体的な立場で、自分の労働時間を自由に管理できて、それにふさわしい待遇をうけているものが管理監督者として認められることになっています。
現実的に、役員ではないほんとうの意味での管理監督者はほとんどいないと思います。
役員以外の自由出勤自由退社なんて、日本にほとんど見ないですよね。
店長ですら、管理監督者として認められないケースも有ります。(日本マクドナルド事件)

ただ、そういった制限をすべて突破できるのであれば、労働時間の制限はかかりません。
自分で管理しているので当たり前といえばそうかもしれませんが。

また、管理監督者とは異なりますが、いわゆる裁量労働制を取れる労働者の場合も
残業時間の制限の例外となります。

裁量労働制には2種類あり、それぞれを専門業務型裁量労働制と、企画業務型裁量労働制といいます。

それぞれの違いについては色々あるのですが、共通点について大事なことは
労働の時間とその配分と遂行方法について労働者に決定権限があること、です。

例えばコピーライターやデザインの考案なんかは専門業務型裁量労働制にあたるのですが、
労働時間がどの程度かかるのか、どこでやるのか、どんなペースでやるのか
については、労働者に任せられる部分が非常に大きいことは想像できるかと思います。
ですので、管理監督者と共通することは、自分の労働時間を自分で管理できること
ということもできるでしょう。

ただ、これは非常に重要な事なのですが、
これらの残業時間の制限を解除できたとしても、労務管理をしなくていいわけではありませんし
働いた時間あたりの給与を支払わなくていいわけでもありません(一部を除く)。

すべからく使用者には労働者の健康と安全を守るためにも労働時間を管理する義務がありますし、配慮する義務もあります。

特に長時間労働に伴う労災なんかでは、この辺は大きな問題になりますし、
労災にならなかったとしても長時間の時間外労働は、労働者の健康にも労働の質にも影響を及ぼさずにはいられません。

労働者と使用者お互いのために、労働時間を適切に管理することは非常に重要ですよね。

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